研究課題/領域番号 |
14540530
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
宮崎 章 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (40251607)
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研究分担者 |
榎 敏明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10113424)
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キーワード | 有機磁性伝導体 / π-d相互作用 / 分子磁性体 / 反強磁性 / 弱強磁性 / 圧力効果 / TTP系ドナー / 有機金属化合物 |
研究概要 |
本年度は以下のπ-d相互作用に基づく有機磁性伝導体の構造および物性について研究を行った。 1.TTP系ドナーBDH-TTPと、Reinecke塩型錯体Cr(isoq)_2(NCS)_4(isoq=isoquinoline)の高圧下における磁性について検討した。Cr塩においては、常圧の転移点7.6Kが0.94GPaでは16.6Kへとほぼ直線的に上昇する一方、残留磁化の値は減少していった。常圧における結晶構造解析の結果より、有機ドナー分子と金属錯体アニオンとの間の一次元交互鎖からなる二次元シート構造をとっていることが明らかになっている。分子場近似による解析により、残留磁化の減少が分子間相互作用増大により説明されること、および相転移温度決定要因としては上記一次元鎖間、とりわけアニオン分子間の相互作用が支配的であることが示された。圧力が結晶構造に及ぼす影響を見積もるため、結晶構造の温度変化を詳細に検討した。拡張Huckel法を用いて見積もった分子間交換相互作用は、結晶の剪断応力方向の熱収縮を反映して、一次元交互鎖内はほとんど温度依存性を持たないが、鎖間は温度低下と共に増大する。温度低下と圧力印加による構造変化が同等と仮定すると、圧力により鎖間、とりわけアニオン分子間の相互作用が増加することが弱強磁性転移点の大きな温度変化の主原因と考えられる。またこの相互作用変化はドナー分子としてBDA-TTPを用いた同型物質の相転移点の低下もあわせて説明される。 2.新規のπ-d相互作用に基づく分子磁性伝導体の開発の一端として、伝導π電子系であるTTF誘導体と局在d電子系である錯体FeCp^*(dppe)とを共役アセチレン鎖で繋いだ有機金属分子を設計した。この分子では鉄原子上のスピンがアセチレン鎖と共役しTTF誘導体近傍まで非局在化することにより、強いπ-d相互作用の発現が期待される。現在この分子および電荷移動錯体の合成を進めている。
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