研究概要 |
昨年度は、1次元に伸長した棒状のポルフィリン組織体であるビスイミダゾリルポルフィリンガリウム錯体がバルクでは光照射時に8倍の電子伝導度の向上を示すことを明らかにした.15年度は,構成単位分子間の電気伝導性の向上を目指すため,2次元のシート状に展開したポルフィリン組織体を調製した.ポルフィリンの4箇所のメソ位に4つのイミダゾリルポルフィリンを結合させた五量体の亜鉛錯体を基板上で再組織化することにより,フィルム状の薄膜を得た.これは五量体のイミダゾリル基が別の五量体の中心金属である亜鉛イオンに配位し,相補的な配位組織化が二次元方向に起こることで形成される.このフィルムの特長は,構成単位のポルフィリン環が多点で強固な配位結合をしているため,断線しにくいことである.1次元に伸長した分子配線の場合,1箇所でも切断されれば,組織体は短くなり,断線箇所が絶縁体になるのに対し,2次元フィルムの場合、五量体の配位結合の1箇所が解離しても,構造が固定されているため,再結合しやすく,また電子は抵抗の少ない結合している他の箇所を通ると考えられ,電気伝導度の向上が期待された.ナノギャップ電極上で五量体亜鉛錯体を再組織化し,電気伝導度測定を行ったところ,飛躍的に電気伝導度は向上し,光照射時で10^<-7>Scm^<-1>を得た.また光を遮断すると速やかに電気伝導度は40分の1以下になり,光の信号を電気信号に変換できることが分かった. また分子伝導を測定する目的で,金基板上にチオール基を有するポルフィリンの組織化を検討したが、モノ置換体であるイミダゾリル基の対面するメソ位にチオール基を有するイミダゾリルポルフィリンの場合,期待通りの単分子膜形成が確認されたが,対面するメソ位に2つのチオール基を有するポルフィリンを,一方のチオール基だけを金基板上に結合させ垂直に画定することが困難で,研究計画の電気伝導度測定を行うシステムを得ることができなかった.
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