研究概要 |
精製したカーボンナノチューブ(長さ2μm,直径20nm)を超音波照射により有機溶媒に懸濁し,超伝導磁石を使って8Tの均一磁場内に一定温度で溶媒が蒸発するまで静置した。試料の温度(230-315K),圧力(20-760torr)はさまざまに変化させた。溶媒が蒸発した後,走査電子顕微鏡を用いてナノチューブの配向を観察し,配向の角度分布を求めた。ナノチューブは磁場と平行に配向した。また,温度の上昇とともに配向の割合が増加した。試料の圧力は,その温度での溶媒の蒸気圧より高くすることが,ナノチューブの配向において必要であった。ナノチューブの配向の角度分布の実験結果は,ボルツマン分布を仮定し,磁化率の異方性をパラメータとしてシミュレーション計算によって再現できた。その結果,ナノチューブの磁気異方性は温度の上昇とともに増加することが明らかになった。磁気異方性の温度依存は,反磁性物質にはあまり報告のない現象で,今後の理論的解明を期待している。 カーボンファイバー(長さ0.5mm,直径、6μm)を液体窒素と有機溶媒に懸濁して均一磁場内に静置し,溶媒の蒸発後,光学顕微鏡を用いてファイバーの配向を観察した。弱い磁場強度(0-1T)において,低温(77K)のとき高温(309K)より配向の割合が高かった。これは,溶媒の熱運動によって配向の撹乱が起きたと解釈できた。ボルツマン分布を仮定し,温度に依存しない磁気異方性をパラメータとして実験結果は計算で再現できた。ファイバーの磁気配向はナノチューブの配向と良い対照をなしている。
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