研究概要 |
カーボンナノチューブ(長さ2μm,直径20nm)の懸濁液に磁場(8T,水平方向)を印加して,その配向を研究している。ナノチューブのような小さな物質は,熱による拡散のために懸濁液中でほとんど沈降しないで,浮遊すると考えられる。そこで,ナノチューブの懸濁液を入れた容器の底に光学顕微鏡のカバーガラスを敷き,溶媒の蒸発した後に,カバーガラス上に残ったナノチューブを走査電子顕微鏡によって観察して,配向を調べた。配向を底面上の2次元平面内の回転と近似し,ボルツマン則を仮定して,配向の角度分布をシミュレーション計算によって再現した。その結果,ナノチューブの磁気異方性の温度変化は0.2×10^<-6>cm^3 K^<-1> mol^<-1>と見積もられた。 カーボンナノチューブが懸濁液中の3次元空間内を回転して,溶媒の蒸発によって底面に接触して配向が止まるのか,あるいは底面上の2次元平面内でも回転するのかについて知見を得るため,カーボンファイバー(長さ0.5mm,直径6μm)を用いて,3次元空間内の配向のその場観察を行った。意外なことに,3次元空間内の像の底面への正射影について配向の確率を計算するのと,それを2次元平面内の回転として近似して計算するのとで,あまり差の無いことが分かった。超伝導磁石の中でその場観察を行うことは難しい技術を必要とすることで,溶媒の蒸発後に底面に付着したナノチューブを観察して,2次元平面内の回転として近似的に計算することで十分な結果が得られると言える。
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