本研究では、荷電コロイド分散液中に塩基を徐放させる新規千法により、i)1辺が1cm以上の直(立)方体で、かつii)底面に平行な結晶面を持つ3次元コロイド単結晶をiii)迅速(1日以内)に構築する方法論を確立することを目的とし、平成14〜15年度に研究を実施した。塩基の拡散手法および拡散挙動の数値解析を中心に鋭意検討を行った結果、1cm角のサイズを持つシリカコロイド結晶を数日以内に再現性よく構築する手法を確立することができた。また、成長方向の長さが数cm、幅数mmの結晶であれば、1日以内に構築できた。結晶構造および結晶面配向については詳細を検討中であるが、予備的に、底面に平行なbcc格子の存在を示す結果を得ている。 当初の研究計画では、塩基を含浸させた高分子ゲルを用いることとしたが、ゲル膜を介して塩基のリザーバーに接触させる手法がより有用であり、また解析も容易であることから、主としてこの手法を用いた。塩基としては弱塩基ピリジンが有効であり、ピリジンとシリカ粒子の中和反応を伴う拡散方程式(反応拡散方程式)を用い、数値的に結晶成長曲線を評価できた。実験との一致は極めて良好であり、成長機構もその主たる部分は理解することができたと考えている。また、当初の予想に反して、強塩基(NaOHなど)を用いた場合には拡散による結晶成長は極めて遅いことが明らかになった。これは強塩基とシリカの中和反応が著しく起こりやすく、自由に拡散するNaOH濃度が極めて低いことに起因する。なお検討を予定していた鋳型の効果については、鋳型の存在無しでもcmサイズ結晶が生成したことから、詳細検討は見合わせた。本cm結晶はフォトニック素子などへの応用展開が期待されるが、将来、材料としての結晶の質がより問題となる場合には鋳型法の検討が有用であると考えている。なお、研究成果はアメリカ化学会誌に速報として掲載予定である。
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