研究概要 |
本年度は、研究目的を達成するために以下の研究を行った。 1.新規反強磁性超伝導体・反強磁性金属の開発 β-(BDA-TTP)_2FeBr_4が常圧下9.5Kで反強磁性体に転移し、圧力下で超伝導性を示すことを見出した。また、この塩と同型で非磁性なGaBr_4塩も圧力下で超伝導性を示すことを明らかにした。一方、金属的なκ-(BDH-TTP)_2FeBr_4が4Kで反強磁性転移を示すことを見出した。この転移温度は圧力をかけると上昇し、さらに磁気散乱を示唆するデータが得られた。現在、圧力下でこの塩におけるπ-d相互作用を調べている。 2.新規BDY系ドナーの合成 BDH-TTPのイオウ原子を一つだけ酸素原子で置換したDHOT-TTPの塩において、DHOT-TTP分子の酸素のHOMOの係数値がイオウに比べて極端に小さくなることを解明し、この置換法が分子間相互作用の減少に有効であることを明らかにした。さらに、この置換法をDHDA-TTPに施して、DHOTA-TTPとOTDA-TTPの合成を成し遂げた。DHDA-TTPのPF_6、AsF_6塩はβ型で30-60Kまで金属的であったが、DHOTA-TTPのPF_6、AsF_6塩はκ型で250-270Kで半導体に転移し、OTDA-TTPのPF_6、AsF_6塩はβ"型で半導体的であった。このように、酸素での置換によって、結晶構造と伝導挙動に変化をもたらすことができることを明らかにした。 また、BDH-TTPに二つのメチル基を導入したDMDH-TTPの合成に成功し、そのBF_4、PF_6、AsF_6塩が4.2Kまで金属的な性質を示し、それらの構造(BF_4,β型;PF_6,AsF_6,βとβ"の混合型)が相当するBDH-TTP塩の構造(いづれもκ型)と異なることを見出した。 これらの新規BDY系ドナーを用いて、さらなる有機(超)伝導体の開発を目指している。
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