研究概要 |
従来,自己集合型大環状超分子錯体を構築するためには方向が規定された配位子と金属部位を使用するのが一般的な方法である.我々は柔軟性に富む配位子と多様な配位形式をとる銀イオンによる大環状超分子錯体の構築を目指し鋭意検討を行って来た.このようなシステムの長所は対アニオンのような直接的に超分子構造に関与しない因子を変化させることにより,超分子構造を劇的に変化させることが期待され,超分子の構造制御に新しい展開を行うことができるものと考えられる.本研究では3-ピリジンあるいは4-ピリジンを持つような第三級アミン二座配位子ならびにそれらの銀錯体を合成しX線結晶構造解析とFAB-MSによって構造を確認した.平成14年度では3-ピリジンを2個持つ化合物を系統的に合成しそれらの銀錯体の構造について検討を行った.その結果配位子として3-ピリジンを2個持つ化合物ではそのほとんどが配位子2個と銀イオンが2個からなる二量体を形成しすることがわかった.平成15年度では4-ピリジンを2個持つ化合物を系統的に合成しそれらの銀錯体の構造について検討した.その結果ベンジル基を導入した配位子の銀錯体は大環状六量体を形成し,その構造は第三級アミン窒素を頂点とするシクロヘキサンのイス型構造と同様の構造をしていた.またピレニルメチル基を導入した化合物の銀錯体では大環状四量体を形成し,シクロブタン類似の構造をしていた.さらに2-ナフチルメチル基を導入した配位子の銀錯体では三回らせん軸を持つ高分子状錯体であることが確認された.これらの錯体のFAB-MSを測定したところ,それらの会合度に一致するような高質量のピークは観測されなかったが,現在ESI-MS等によって会合度を検討しているところである.これらの研究で得た結果をさらに発展するべく,現在新たな配位子を合成し,それらの種々の金属錯体の構造について鋭意,検討を行っている.
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