申請者らは、ハロゲン化スズ(II)によるアリルアルコール、アリルエステル、およびハロゲン化アリルからのアリルスズ化合物の生成法を開発し、カルボニル化合物への求核付加反応(カルボニル-アリル化反応)に利用してきた。そのアリル化法は簡便ではあるが、ハロゲン化スズ(II)を溶かすために、高沸点の水溶性極性溶媒であるジメチルイミダゾリジノンやDMFを必要とする。そのため、その方法は処理、精製の点から大量合成には向かない。本申請では、塩化メチレン中で、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(TBAI)を用いた塩化スズ(IV)の還元によるトリクロロスタナート(II)の生成、およびそれとハロゲン化アリルまたはアリルメシラートとの反応によるアリルトリクロロスズの発生法を開発した。そのアリルトリクロロスズ発生法をアルデヒド類への求核付加によるホモアリルアルコールの合成(Barbier型カルボニル-アリル化反応)へ応用した。SnCl_4およびTBAIの使用量や生成物であるホモアリルアルコールの収率の点から、出発アリル化合物としては2-プロペニルメシラートが1-クロロまたは1-ブロモ-2-プロペンより優れていることを見出した。また、1-クロロ-2-ブテンを用いるカルボニル-アリル化反応において、γ-syn付加体である1-置換 2(syn)-メチル-3-ブテン-1-オールを選択的に生成することを見出した。現在のところ、試薬の使用量や収率に問題はあるが、Barbier条件下でのγ-syn選択性の発現は特筆に値するものであり、試薬その他の反応条件の改良により有効なカルボニル-アリル化法になると考える。
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