研究概要 |
アリルトリハロスズによるカルボニル化合物のアリル化反応(カルボニル-アリル化反応)をより汎用性の高い方法とするために、高沸点極性溶媒中でハロゲン化スズ(II)を用いる方法から、ヨウ化物イオンによりハロゲン化スズ(IV)を還元してトリハロスタナート(II)を発生させ、アリルスズを生成する方法に転換することを考えた。この新規発生法でアリルクロリド類またはアリルメシラート類からアリルトリハロスズを生成し、種々のカルボニル-アリル化反応に応用した。昨年度は、低沸点非極性溶媒の塩化メチレン中で、塩化スズ(IV)と13倍モルのヨウ化テトラブチルアンモニウム(TBAI)を用いて、上記アリル化反応を開発した。この方法は、塩化スズ(IV)が加水分解しやすいという欠点を持っているため、操作が厄介であった。本年度は、塩化スズ(IV)の替わりに、固体のため比較的安定で取り扱いやすいヨウ化スズ(IV)を用いたところ、2倍モルのTBAIでアリルトリヨードスズを生成し、高収率でアルデヒド類をアリル化することができた。また、溶媒を1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オンに替えると、TBAIをヨウ化ナトリウムに替えることができ、より効率的な反応となった。さらに、系内にヨードトリメチルシランを添加すると、触媒量のヨウ化スズ(IV)で効率よくカルボニル-アリル化反応が起こることがわかった。また、このハロゲン化スズ(IV)の還元法をプロパルギルクロリド類およびプロパルギルメシラート類の反応に利用し、選択的カルボニル-プロパルギル化、またはアレニル化反応を可能にした。
|