ゼオライトは分子サイズの細孔が1次元から3次元的につながった結晶性のアルミノケイ酸塩で、その特異的な細孔構造とカチオン交換能により、他の物質では得られない優れた吸着特性、触媒活性・選択性を有する。ゼオライトは、特に典型的な固体酸触媒として実用的に重要で、その反応機構は基礎化学的にも興味深い。その活性点である酸点をキャラクタライズする方法としてさまざまな手法が使われてきたが、手法によって得られる結果が異なることがあり、手法間の比較をすることが望まれる。特にプローブ分子を用いて分光学的に検討する方法は、分子レベルで酸点をキャラクタライズする方法として注目される。 そこで、ゼオライトの酸点の赤外分光学的なプローブ分子として従来から用いられているピリジンやアンモニアと、代表者らが近年提唱してきた窒素、および比較的最近用いられるようになった一酸化炭素などの非常に弱い塩基プローブ分子との比較を行った。また、水のプローブ分子としての特質を検討し、水はルイス酸点に優先的に吸着したのちブレンステッド酸点に吸着すること、このことを利用してルイス酸点量を半定量的に測定できることがわかった さらに、分子長の異なるアルカンを用いて、細孔径の小さなゼオライトであるフェリエライトの吸着を検討し、細孔入り口付近にある酸点の性質を入り口からの距離に応じて調べることができることが明らかになった。このように化学的性質が類似して分子の大きさの異なるプローブ分子を系統的に用いることにより、ゼオライトの酸点の位置関係を検討できることが明らかになった。
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