研究概要 |
1.ランタノイド(III)(Ln)のキレート抽出において,トリス(アセチルアセトナト)クロム(III)(Bull.Chem.Soc.Jpn.,74,1641(2001))やトリス(4-イソプロピルトロポロナト)コバルト(III)(Anal.Sci.,86,957(2001))がLnの抽出を著しく増大することを既に報告したが,本研究ではテノイルトリフルオロアセトン(Htta)あるいはアセチルアセトン(Hacac)によるLn,特にLaの抽出が,Al^<3+>イオンの共存によって増大することを見出した。これはAl^<3+>の抽出に伴ってLaが共抽出されることを示している。置換不活性なCo(acac)_3とCo(tta)_3を用いた比較実験より,Al^<3+>キレートが錯体配位子となってLnキレートに付加することを確かめた。さらに,HacacによるLnの抽出に対するCu^<2+>の増大効果はAl^<3+>よりも小さかったが,Zr^<4+>はそれより遥かに大きいことが分かった。平衡解析からLa(acac)_3とM(acac)_nが二核付加錯体を形成することを明らかにした。M^<n+>の抽出増大効果が有機相中での二核錯体生成に起因すること,またその大きさがLnとM^<n+>の組み合わせによってによって著しく異なることが明らかとなった。 2.Httaによるアルカリ土類金属(II)(AE)の抽出において,Co(acac)_3を共存させるといずれのAEでも大きな抽出増大効果が観察され,特にSr^<2+>とBa^<2+>では分配比は100倍以上増大した。さらに,Al^<3+>及びFe^<3+>を共存させたところ,前者においてSr^<2+>>Ca^<2+>の順で抽出の増大(共抽出)が観察された。平衡解析よりAE(tta)_2とM(tta)_3が1:1付加錯体を形成することが明らかとなった。このように配位不飽和-飽和キレート間での付加錯体生成とそれによる共抽出の発現はキレート抽出において広く起こりうる現象であると言える。
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