ヒト血漿タンパク質を変性剤のない条件で2次元電気泳動すると検出されず、2次元電気泳動の2次元目(サイズ分離電気泳動)でSDSを存在させると分子量約1万から4万の範囲に検出される微量タンパク質群を、硫安分画法で35%-55%飽和画分として濃縮することに成功した。この分画をミクロ2次元電気泳動にかけ、1次元目の試料添加方法と2次元目のポリアクリルアミド密度勾配の傾きを工夫することによって、SDS平板ゲル上で約110個のスポット(色素染色による)として検出した。さらに、変性剤のない条件でのIgG、IgM、α_2-macroglobulin、Fibrinogenなど高分子量タンパク質の分離パターンかそれぞれのタンパク質位置を切り出し、それを直接2次元目のSDSポリアクリルアミド密度勾配ゲル上端に密着させ電気泳動することによって、これら微量タンパク質の多くが変性剤のない条件ではIgGと会合している可能性が高いことを示した。また、分離されたそれぞれの微量タンパク質スポットを切り出し、トリプシンでペプチド断片化し、質量分析(MALDI-TOF MSおよびESI-MS/MS)し、それぞれペプチドマスフィンガープリント法およびマスタグ法によって解析することによって、これらの多くがフィブリノーゲンα鎖の断片であることを明らかにした。これらの結果は、IgGの血液凝固系への関与など、血漿タンパク質の機能に関する新しい知見を含むものであると考えられる。
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