研究概要 |
近年、生体内における光学活性生理活性物質のラセミ化あるいはD-アミノ酸の役割などが明らかにされてきている。また、副作用の問題などから光学活性医薬品の光学純度測定が重要になっており、光学異性体分離の重要性は益々高まっている。一方、分析装置のダウンサイジングが急速に進んでいる。特にチップ化された装置や電気浸透流を利用した分離系では流路系と分離系が一体化されたものが多く、分離部を変更することは容易ではない。 本研究では、キラリティーの異なる複数のキラルセレクターを同一カラム内に存在させ、光照射により光学異性体の溶出順序を制御することのできる微小カラム(オンサイトキラルスイッチング微小カラム)を開発することを目的とした。 D-およびL-バリンを用いて、アゾベンゼン部位を有するキラル固定相(CSP(1)およびCSP(2))をそれぞれ調製した。調製した固定相を光透過性ポリマー被覆石英キャピラリー(内径100μm)にスラリー法により20cmづつ充填したマイクロカラムを使用した。試料として3,5-ジニトロベンゾイル-D, L-ロイシン・イソプロピルエステルおよび3,5-ジニトロベンゾイル-D, L-アラニン-メチルエステルを用いたとき、CSP(1)の部分にのみ紫外光を照射した後では試料はD体、L体の順で溶出した。続いてCSP(1)に可視光を照射後、CSP(2)の部分にのみ紫外光を照射したところ、試料はL体、D体の順で溶出するようになった。この変化は可逆的であり、紫外光照射により固定相のキラル選択性が失われたことが原因と考えられる。
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