研究概要 |
水性二相抽出法による金属イオンの選択的抽出システムの構築とその高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)分離への展開を目的として,下記の研究を行なった。 (1)希土類元素の水性二相抽出条件の検討 PEG-Na_2SO_4水性二相系では,すべての希土類元素がpH2-9の範囲で分配比がほぼ0.1以下と下相であるNa_2SO_4に富む相に存在することがわかった。これは下相に多量に存在している硫酸イオンと希土類元素が錯体を形成しているためと考えられる。一方,アセチルアセトン添加系では,各希土類元素の分配比はpHの増加に伴って増加する傾向を示した。アセチルアセトナト錯体の安定度定数と分配比の間には相関があり,相互分離が可能であることが示された。 (2)水性二相HSCCCによる希土類元素の相互分離 PEG#4000-Na_2SO_4水性二相系にアセチルアセトンを添加した系をHSCCCに導入し,PEGに富む相を固定相として各希土類元素の保持挙動を調べた。その結果バッチ法により得られた結果から予想された通りに,分配比の小さい希土類元素ほど早く溶出した。そこで,被検体としてLa, Ce, NdおよびYbを選択し,相互分離を試みたところ,ピークに重なりがあるものの,4種希土類元素を分離できる可能性が示唆された。次いで,希土類元素の保持挙動に及ぼすPEGの分子量の影響についてPEG#10000もしくはPEG#1000を用いて検討した。その結果,PEGの分子量が増加すると,ピークが広がってしまい,相互分離は困難であった。これは,固定相として用いるPEG相の粘性が大きくなり,カラム内で二相が効率よく撹拝されていないためと考えられる。一方,PEG#1000を用いた系では4種希土類元素が完全に分離された。分離度はLa/Nd=1.9,Nd/Ce=2.3,Ce/Yb=1.3となり,良好な値が得られた。
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