研究概要 |
酸性抽出試薬による金属イオンの溶媒抽出において、中性配位子を添加すると抽出が著しく増大する場合がありこれを協同効果という。従来は、協同効果により金属の抽出は増大するが、金属間の分離は悪くなることが知られていた。しかし、ある特定の酸性抽出試薬と中性二座配位子の組合せでは、金属問の分離が向上する場合があることがわかってきたが、その例は多くない。本研究では、協同効果による希土類元素間の分離係数の変化に関わる因子の影響について検討し、さらに環境への負荷の小さい試薬による高い分離性能を有する協同効果系をめざす。今年度は、酸性抽出試薬として酸解離定数の大きいβ-ジケトン類で、処理過程で有害となるハロゲン元素を含まない1-フェニル-3-メチル-4-ベンゾイル-5-ピラゾロン(Hpmbp)を用い、種々の中性二座配位子による希土類元素(RE)の協同効果を調べた。中性二座配位子に1,10-フェナントロリン誘導体を用いたところRE(III)にHpmbpが3分子、中性配位子が1分子配位した付加錯体を生成して抽出されていることがわかった。分離については、Hpmbp単独での抽出の場合に比べLa〜Tb間で向上した。また、酸解離定数の小さいβ-ジケトン類であるジベンゾイルメタンを酸性抽出試薬として、ビピリジン誘導体の2,2'-ビ-4-ピコリンや、今まで用いられたことのないビピリジン類似のN,N配位となると考えられる5-ジ(2-ピリジル)ピラゾール(dpp)を中性配位子として協同効果を調べた。協同効果の大きさはフェナントロリン誘導体よりは小さいがその傾向は類似している。希土類元素間の分離係数が最も大きいものの一つであるジ-2-エチルヘキシルリン酸系と比較して、La〜Eu間において本系の方が分離の良いことがわかった。
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