研究概要 |
ヒト先天性白内障の成因や水晶体機能の維持機構についての分子生物学的解析にはモデル動物を使用することが有効であることが早くからいわれている。我々はSJL/Jマウスから自然発症した白内障マウスRCT (Rinshoken Cataract)を発見した。水晶体上皮細胞の微細な変化が生後2日目から始まり、生後約3.5ヶ月で水晶体の白濁が肉眼で観察することができる。この白内障は劣性の表現形式をとり、白内障に必須のrct遺伝子(第4染色体)と発症を促進する修飾遺伝子(mrct、a modifier of rct)により白内障の発症時期が規定されている(Maeda YY, et al. Mamm. Genome, 2001)。今年度はまず、日本産野生マウス由来の近交系マウス、MSM/Ms,とRCTマウスで亜種間交雑系F2を約600頭作成し、連鎖解析を行い、rct遺伝子の存在可能領域を狭めた。マウスゲノムデータベース(NCBI)を用いて解析した結果、現在のところ、rct遺伝子は約850kbpの染色体断片に存在する。この領域にほ少なくとも8個の既知遺伝子と24個のESTが存在する。これらの遺伝子の多くが眼で発現していたので、キャディデイトポジショナルクローニングを行なって、批遺伝子を探索している。また、この領域のBAC contigの構築を完了したので、BACトランスジェネシスによるレスキュー実験とrct遺伝子を含むBACの解析を進めている。この他、rctコンジェニック系統を作製したので、クローニングに使用している。修飾遺伝子はこれまで第5染色体にひとつみつかっていた(mrct2)が、第1染色体上に新たにもうひとつ見つかった(mrct1, P<<0.00001)。これらについてはさらに詳細なマッピングを行なっている。
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