研究概要 |
RCTマウスはSJL/J近交系に自然発生した突然変異体で、小眼球症を伴う劣性の先天性白内障を発症する。症状の進行は比較的遅く、生後約3-3.5ヶ月に肉眼によって観察することができる。この白内障は第4染色体上にある原因遺伝子、rct、と第5染色体上にある修飾遺伝子、mrct1、によって発症が規定される(Maeda, YY etal.,Mann.Genome,2001)。これまでの連鎖解析の結果、rct遺伝子は1.15MbのDNA断片上に存在する。これはこの領域を日本産野生マウス由来の近交系、MSM/Ms、のDNA断片で置換して作製したコンジェニックマウスが正常な水晶体をもつことによって証明された。遺伝子を単離するためにpositional candidate cloningとBACトランスジェネシスを行った。この領域には27個の遺伝子が報告されている(NCBI database)。positional candidate cloningの結果、このうち11個はrct遺伝子ではないことがわかった。残り16個については解析中である。DNA断片をカバーするBAC contigから4つのBACを選び、トランスジェニック(Tg)マウスを作成した。rct遺伝子がレスキューされるかどうかTgマウスの表現型を解析中である。修飾遺伝子については第5染色体上のmrct2以外に、第1染色体上にmrct2が存在することを新たに見つけた。mrct2はmrct1に比べて修飾作用は弱い。けれども2つの修飾遺伝子が同時に存在しない場合、白内障の発症は著しく遅延する(生後約3→7ヶ月)。修飾遺伝子の単離のためのリソースマウスとして、遺伝子が存在する位置をMSM/Ms由来のDNAで置き換えたコンジェニックマウス(N_7)を作成した。これらのマウスの解析から、mrct1は第5染色体の3cM、mrct2は第1染色体の15cMの断片上に存在することがわかった。
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