研究概要 |
種子生産における大きさと数のトレードオフモデルを解析した。このモデルでは,発達中の種子が親個体から資源を吸収する速度に制約があり,また,維持呼吸による資源の消失があると仮定している。このモデルが予測する大きさと数のトレードオフでは,種子の数が減っても,種子はそれほどには大きくならない。そして,種子の数が少ないほど,種子生産に投資した貯蔵資源の利用効率(種子の総量/貯蔵資源量)は低下してしまう。そのため,種子を小さくして種子数を増やすことが有利となる。また,このモデルを拡張して,大きな親ほど大きな子を作るという一般傾向を統一的に説明することに成功した。キンコウカを用いて,個々の花が繁殖成功にどのように寄与しているのかを調べた。その結果,ディスプレイサイズの増大に伴い,花当たりの訪花数は増大するが,訪花数の増大は花粉の散布にしか貢献していないことがわかった。このようなときは,ディスプレイサイズの大きい時期に咲く花ほど,(雄適応度への貢献)/(雌適応度への貢献)が大きいことが期待される。実際にそのような花ほど雄比が大きいことも確認でき,仮説の妥当性が示された。
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