今年度の研究は御蔵島御山におけるミクラザサの一斉開花後の個体群の回復が急激な状況から、できるだけ精密に満遍なく回復実生個体群からの試料を採集すること、御蔵島および八丈島におけるミクラザサの分布域を踏査し、全域をカバーするように試料を採集すること、に重点を置いた。また、DNAの分析実験に必要な機材を整え、本格的なAFLP法を実施する前に、確実に多型なバンドの検出が可能な実験条件を確立することを目標とした。 1.試料の採集 御蔵島御山のミクラザサ個体群の回復群落の中心部分に位置する標高670m付近において1ヘクタールの調査区を設置し、5メートル間隔の方形メッシュを切り、各交点の371箇所より試料を採取した。同プロット中に散在する未開花稗13箇所より試料を採取した。また、御山山頂部および御山の南東約1kmに位置する長滝山のミクラザサ群落より、それぞれ7および9試料を採取した。調査プロットと御山山頂のほぼ中間にあたる標高761m地点において、十数本程度の再生程が10m×17mの範囲に集中して分布する場所を見つけ、13本の再生稈より試料を採集した。八丈島三原山では、ロラン局直下の約1平方キロメートルの群落より79試料を、大川上流の個体群より6試料を採取した。以上の総計485試料について、各0.3gを秤量して一覧表を作成し、DNA抽出の準備を完了した。 2.大量にDNA断片の増幅が可能なPCR装置としてABl9700を購入し、AFLPの予備実験を行った。その結果、安定して多型なバンドを得るために2種類の制限酵素EcoR1およびMse1について、総反応液量の2割程度の濃度が適当であることが判った。
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