赤道海域(東経175°)の熱帯外洋浮遊生物群集を対象とし、水深200mまでの水柱内の全プランクトン生物を種・属もしくはバクテリアなどのグループレベルで同定し、それぞれの生物量を把握した。データは当該研究者が関与して1991〜1995年(この内1994年は5月、その他は9月の同時期)に実施された「海洋中の炭素循環メカニズムの調査研究」で得られた単年度のデータを整理し、未計測のものは保存試料を用いて同定して計数した。ついで、得られた生物種・属もしくはグループを栄養と補食の特徴から10機能群に分け、さらに各機能群構成生物を大きさ別にコンパートメントに分けた。機能群とコンパートメントをベースにして食物連鎖関係に基づいて食物網図に整理した。その際に、必要な捕食・被食関係は実際の観察結果と既存の文献資料から得、それ以外はサイズ依存則で推定した。バクテリア、植物プランクトン、原生動物、後生動物の成長速度は既存の関係式で求めた。その結果、同一機能群の生物でも、大きさによって食物網内での貢献が顕著に異なっていることが明らかになった。例えば、植物プランクトンの場合、圧倒的に生物量の多いピコ植物プランクトンの生産物は高次栄養段階の生物に達するまでに多くの栄養段階を経由するが、ミクロ植物プランクトンでは経由する栄養段階数が少なくなるために少ない生物量でも高次栄養段階の生物を支える割合が格段に大きいことが明らかになった。同様のことは各栄養段階でも認められた。得られた結果は現在論文として纏めている。
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