チゴガニのバリケード構築行動をつくり出す外的要因を検討するため、1)バリケード頻度の日変化と季節変化、2)周辺個体の密度とバリケード頻度の関係、3)すみ場所の底質条件とバリケード頻度との関係、を野外調査により検討した。その結果、バリケード頻度は、繁殖期に増加するものの、大潮から小潮への潮汐変化とは対応しないこと、また、周辺個体の密度とも相関しないこと、さらに、すみ場所の底質条件が大きく異なる2地域間でも、その頻度に違いはみられないことが明らかとなった。 一方、数理モデルによる説明では、バリケードを造る側の戦略と造られる側の戦略を考え、周囲の状況によって戦略を変えるモデルを構築し、各戦略をとる個体の時間的変化をみたところ、バリケードを造る個体の割合が高いとバリケードをこわし、そうでない時は、こわさない戦略が有利になることがわかった。さらに、個体ベースのモデルを構築し、どのような戦略がESSになるかを検討したところ、自分より小さい個体にバリケードを造り、自分より小さい個体のバリケードをこわす戦略がESSになる場合が導き出せた。即ち、この2つモデルから、バリケードが体サイズの小さい個体に対して造られていることや、集団の一部の個体しかバリケードを造られないという現実に近いものがモデル上で得ることができたといえる。
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