研究課題
本年度は、瀬戸内海沿岸地域の外来アリ分布広域調査、廿日市市周辺におけるアルゼンチンアリ分布拡大調査用定点観察プロットの設定と定期調査、営巣場所をめぐる在来アリとアルゼンチンアリの相互作用、アリ捕食者の食性調査などを実施した。主な結果は以下の通り。(1)広域調査ではアルゼンチンアリの新産地は発見できなかった。(2)廿日市市では着々とアルゼンチンアリの分布が拡大しており、新侵入地が数か所見いだされた。アリの巣別れによる分布拡大速度は遅く、年間20-50メートル程度であった。最近侵入した地点では在来アリの著しい減少は確認されなかったことから、在来アリの駆逐には侵入後かなり長い年数が必要であることが示唆された。(3)クロヤマアリはアルゼンチンアリが侵入した地点で激減するが、巣をマークして定期的に巣の利用者を記録したところ、幾つかの巣がアルゼンチンアリに置きかわっており、巣の乗つ取りがクロヤマアリが駆逐される至近要因のひとつと考えられた。(4)アリ捕食者であるニホンアマガエルの食性を調査し、本種の若齢期の餌の大部分がアルゼンチンアリであることが明らかになった。追加実験が必要ではあるが、広食性捕食者に対するアルゼンチンアリの影響は軽微なようだった。これらの野外調査とともに、これまでの予備調査結果をまとめて在来アリに及ぼす影響について学術雑誌(Sociobiology)に投稿するとともに、国際社会性昆虫学会で発表した。また、アルゼンチンアリの分布状況や在来アリに及ぼす影響などについて一般向け雑誌(昆虫と自然)に紹介した。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)