野外個体群における世代重複の確認 野外では、コニシキソウの発芽は6月から10月までみられ、種子繁殖は7月中旬から11月までみられた。また、移植実験により、1年のうちで3世代繰り返し、世代が重複することが明らかとなった。しかし、野外では、埋土種子由来の実生(第1世代)と当年生産された種子に由来する実生を区別することは不可能であるため、野外実験により、埋土種子由来の実生の出現を調べた。その結果、8月末以降は実生は出現しなかった。したがって、9月以降の発芽は、当年生産された種子のみに由来すると考えられた。 埋土深度の違いが発芽率におよぼす影響 アリの巣内に持ち込まれた種子は巣内のさまざまな深さに置かれる。そこで、埋土深度の違いが発芽率におよぼす影響を調べた結果、深度1cmの種子の発芽率が最も高く、次いで深度2cm、5cmの順で、地表面の種子の発芽率は最も低かった。 種子の発芽率におよぼす光と温度条件の影響 夏期に生産された種子では、40℃で明暗に関係なく5〜6日で50%の種子が発芽し、35〜20℃では40日前後で50%の種子が発芽し、暗条件の方が明条件よりやや発芽が早かった。したがって、夏期の種子には休眠性がなく、発芽は温度に依存し、発芽にはかなりの高温が必要であることが明らかとなった。一方、晩秋に生産された種子も、低温経験なしでも40℃では早い時期から発芽がみられた。しかし、低温(5℃)処理(2ヶ月)をすると、発芽速度は高くなることが明らかとなり、晩秋に生産された種子は休眠はしていないが、低温経験はその後の発芽率を高めることが考えられた。 自動種子散布距離 夏にみられる自動種子散布距離は、平均約20cm、最大45cmで、株の広がり(平均約10cm)より有意に長く、効果的に散布されていた。しかし、秋にみられるアリによる散布距離は、アリの巣までの距離の影響は受けるものの、自動散布距離よりはるかに長い(平均約2m)と考えられた。
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