世代が重複する一年草コニシキソウの繁殖特性と2つの種子散布様式の意義

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14540582
• 研究機関: 佐賀大学
• 研究代表者: 鈴木 信彦 佐賀大学, 農学部, 教授 (80183846)
• キーワード: コニシキソウ / 自動種子散布 / 収穫アリ型種子散布 / 生活史特性 / 世代重複 / 分枝様式 / 繁殖特性 / 結果率

研究概要

種子繁殖における栄養成長の意義
鉢植えにした種子繁殖開始後の株で、栄養成長様式(shootの生長や分枝様式など)と種子繁殖様式(種子生産数や種子生産部位など)について詳細に調べた結果、Primary shootは伸長生長はするが、新しくPrimary shootを出すことはほとんどなく、Lateral shootが次々と分枝を繰り返しながら生長することが判明した。また、種子はshootの生長点の部分で生産されるため、種子生産量は、Primary shootよりLateral shootで多く、Lateral shootの生長、特に分枝が種子生産に大きく貢献していることが明らかとなった。
結果率と種子散布
夏期および秋期の自然条件下ならびに秋期昆虫排除条件下における結果率は、いずれも高い値を示し、コニシキソウの花は自家和合性で、自家受粉によって高い結果率が達成されていることが示唆された。夏期に生産された種子は自動種子散布により数日間で散布されたが、秋期に生産された種子は自動種子散布されずに、アリによる種子散布がみられるため、アリに散布されない場合には、種子が比較的長い間親個体に残っていることが示唆された。
アリにより巣内に運ばれたコニシキソウ種子の運命
コニシキソウとアワの種子をトビイロシワアリの人工巣に運ばせ、巣に運び込まれた種子の運命を調べた結果、アワ種子の方が巣に搬入される数が少なかったが、再び巣から搬出されることはなく、すべてが食害された。一方、巣に搬入されたコニシキソウの種子の一部は再び搬出されたが、搬出された種子も巣内に残った種子もほとんど食害されなかった。また、アワ種子は巣内の幼虫がいる場所に運ばれる傾向がみられたが、コニシキソウではそのような傾向はみられなかった。コニシキソウの種子は、巣に運ばれる前と後で種子表面の構造が変化しており、種子表面の物質をアリが摂食した可能性が考えられた。したがって、少なくともコニシキソウの種子本体はアリの食物として運ばれていないことが判明した。

研究成果

• [文献書誌] Katayama, N.: "Changes in the use of extrafloral nectarines of Vicia faba(Leguminosae) and honeydew of aphids by ants with increasing aphid density"Annals of the Entomological Society of America. 96(4). 579-584 (2003)
• [文献書誌] Katayama, N.: "Bodyguard effects for the aphids of Aphis cracciova Koch in relation to the activity of two ant species, Tetramorium caespitum Linnaeus and Lasius niger L."Applied Entomology and Zoology. 38(3). 437-433 (2003)
• [文献書誌] Suzuki, N.: "Signficance of flower exploding pollination on the reproduction of the Scotch broom, Cytisus scoparius (Leguminosae)"Ecological Research. 18(5). 523-532 (2003)
• [文献書誌] Kawagoe, T.: "Flower size dimorphism avoids geitonogamous pollination in a nectarless monoecious plant Akebia quinata"International Journal of Plant Sciences. 134(6). 893-897 (2003)
• [文献書誌] Suzuki, N.: "The efficiency of herbivore exclusion by ants attracted to aphids on the vetch Vicia angustifolia L. (Leguminosae)"Ecological Research. 19(3)(in press). (2004)
• [文献書誌] Katayama, N.: "Role of extrafloral nectarines of Vicia faba for attraction of ants and herbivore exclusion by ants"Entomological Science. 7(2)(in press). (2004)