沖縄県本島の億首川河口干潟におけるUca lactea perplexa、同じく億首川河口および西表島の与那田川河口干潟におけるU. vocans vocansの個体群を対象とし、雄の大型鋏脚の左右不相称性に関する野外調査と予備実験(形態観察・計量および分子系統解析用の標本採集を含む)を実施して以下の結果を得た: 1.本島のU. l. perplexaの雄1036個体では、左の鋏が大型であるもの(「左利き」と呼ぶ)が510個体(49-2%)、大型鋏脚が再生肢(過去の闘争や捕食回避などで一度は脱落)のものは134個体(12.93%)であった。再生肢を持つ個体の中での左利きの割合は47.8%であった。 2.同地点のU. v. vocans569個体では、左利きが30個体(5.3%)のみであり、再生肢を持つものの割合も低かった(5.8%)。再生肢を持つ個体中の左利きの割合は3.0%であった。西表でも左利きの個体は少なく641個体中の28個体(4.4%)のみであった。再生肢を持つ個体の割合は本島の個体群より高かった(10.5%)が、その中の左利きの割合は2.98%であった。 3.大型鋏肢を使った雄の求愛や闘争に伴う血中乳酸値の変化を本島のU. l. perplexaについて調べたところ、これらの社会行動が嫌気呼吸の産物である血中乳酸の量を有意に増加させることが明らかになった。 4.Uca v. vocansを対象とした野外実験立案のための行動観察を西表で実施し、求愛や闘争などが頻繁に生じる時間帯等の概略を把握した。 5.海外共同研究者のP. Backwell博士(キャンベラ大学)がオーストラリア北部のダーウィンの個体群についての情報を収集し、同大学のM. Jennions博士とともに平成15年度のタイ、および平成15ないしは16年度のオーストラリアでの共同調査・実験についての議論を進めた。
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