研究概要 |
オーストラリア北部ダーウィンのマングローブ林周辺に生息する3種のシオマネ類Uca lactea mjoebergi, U.vocans dampieriおよびU.dussumieri capricornisを対象とし,それらの雄の鋏脚における左右不相称に関する調査を行った。また,Australia National UniversityのP.Backwell博士らと協力しつつ,それぞれの種類における求愛行動に関するデータを同時に収集するとともに,U.dussumieri capricornisのなわばり行動に関する調査・実験を行った。主な成果は以下のとおりである: 1.ダーウィン・イーストポイントのU.l mjoebergiの雄547個体では、左の鋏が大型のもの(「左利き」)が47.2%を、大型鋏脚が再生肢(過去の闘争や捕食回避などで一度は脱落)のものは11.0%を占めた。左利きの割合は沖縄やタイ国の近縁亜種のU.l.perplexaやU.l.annulipesでも同様であるが、再生肢の割合は低く、闘争や捕食などの生態的要因の重要性は比較的低いと思われる。しかし、その値はU.vocans complexにおける最大値に匹敵し、本亜属への生態的要因による選択圧は高いものと考えられる。 2.Uca v.dampieriの雄455個体では、「左利き」は1.5%、再生肢を持つのものは5.1%であり、他地域の同亜属近縁種に比較すると、いずれも低いものであった。 3.Uca d.capricornisの雄205個体では、「左利き」は50.5%、再生肢を持つのものは2.4%であった。本種に関しては、雄と雌が有する巣穴(行動の起点となる)の空間配置を調べ、雄のなわばり内、ないしは近傍には雌が占拠する場合が多い傾向を認めた。
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