花粉管誘導機構の解析 誘引物質の種特異性について、トレニア属3種と近縁のアゼトヴガラシ属2種を用いて明らかにした。これらの植物は胚嚢が裸出しており、レーザーアブレーションなどにより助細胞がin vitroで花粉管を誘引することを確認した。そこで異種の胚珠を混合して培養したところ、誘引活性に強い種特異性があることが明らかとなった。種特異性は用いる花柱組織の種には依存せず、またin vivoにおいて生殖隔離の要因となる可能性も示された。これまでに誘引物質の候補とされてきたCa^<2+>やGABAなどの低分子が助細胞由来の誘引物質ではないことも合わせて示された。さらに、胚珠の胞子体組織に由来し花粉管を活性化する分子を新たに発見してこれが糖タンパク質であることが示唆され、また誘引物質はこの活性化物質よりも種特異性が強いことが示唆されたため、誘引物質がペプチド性のものである可能性が高まった。また、活性化物質の解析を進める中で培地上のほぼ全ての花粉管を活性化させる(助細胞の誘引シグナルに反応できるようにする)ことが可能になり、今後花粉管誘引物質の解析を進めていく上で重要な実験系を開発できた。 重複受精の動態解析 生殖細胞の生体染色法および高感度顕微鏡システムの構築により、花粉管内での精細胞の動きなど、これまで未知だった動態が明らかとなった。また、より明るく無害に細胞をラベルするためにGFPを利用する準備を進めた。その結果、パーティクルガン法によりトレニアの雌性配偶体をトランジェントに形質転換することに成功した。シロイヌナズナの配偶体特異的アクチン遺伝子ACT11のプロモーターがトレニアの雌性配偶体で良好にはたらくことも明らかとなった。また特定の核や細胞に簡便に遺伝子導入できるマイクロインジェクション法の開発にも成功しており、受精の動態を解析していくための重要な基磐技術が開発できた。
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