| 研究概要 |
シロイヌナズナのcrumpled leaf(crl)遺伝子変異体ではプラスチドが巨大化するとともに植物細胞の分化・分裂方向が異常となる。今年度はCRL遺伝子の機能を明らかにするためにまず、CRL::GFP融合タンパク質をシロイヌナズナで発現させて、CRLタンパク質の細胞内局在を調べた。その結果CRLタンパク質がプラスチドの包膜に存在する事が明らかとなった。さらに、単離した葉緑体を膜画分と可溶性画分とに分けCRL-GFPタンパク質が、膜画分に存在する事およびCRL-GFPタンパク質が単離した葉緑体のトリプシン処理によって分解される事を明らかにした。これらの結果もCRL-GFPの結果同様にCRLタンパク質が葉緑体の包膜に存在する事を示している。以上の結果から、植物の植物細胞の分化・分裂方向の決定にプラスチドに局在するタンパク質が重要な働きをしている事を明らかにできた。さらに、CRLタンパク質と相互作用するタンパク質(CRL Interacting Proteins, CIPs)を酵母two-hybrid screening系を用いてスクリーニングし、CRIPの候補としてタンパク質シャペロンと考えられるタンパク質を得た。また、crl変異体においてはプラスチドへのタンパク質輸送に一部異常が見られる事を明らかにした。以上のほかに、巨大化した葉緑体の内部膜構造は野生型と同様である事、およびCRL遺伝子を過剰発現しても植物体には顕著な変化が見られない事も明らかとした。
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