研究概要 |
トウモロコシ及びシロイヌナズナから既に単離済みの2-オキソグルタル酸/リンゴ酸輸送体(OMT)およびジカルボン酸輸送体(DCT)のcDNA,ならびにシロイヌナズナ遺伝子破壊株を用い,以下のように各輸送体の生理機能を解明した. 1.シロイヌナズナ遺伝子破壊株葉緑体の基質輸送活性の解析 遺伝子破壊株植物体より葉緑体を単離し,シリコンオイル遠心法を用いて,リンゴ酸およびグルタミン酸に対する輸送活性を調べた.DCT遺伝子破壊株では,両ジカルボン酸輸送能が極めて低下しており,DCTがリンゴ酸およびグルタミン酸輸送に必須であることが明らかとなった.また,葉緑体へのオキサロ酢酸輸送はOMTおよびDCTを介して主に行われていることを明らかにした.さらに,DCT遺伝子破壊株と同様の光呼吸変異がみられるCS156株ではDCT遺伝子上にアミノ酸置換を伴う点変異が起こっていることを確認した. 2.トウモロコシ葉緑体での両輸送体の機能解析 ゲノムサザン解析の結果,トウモロコシには1種類のOMT遺伝子しか存在しないことが明らかとなり,OMTは主に葉肉細胞において機能していると考えられた.また,単離葉緑体を用いてオキサロ酢酸取り込み活性を測定したところ,葉肉細胞葉緑体の方が維管束鞘細胞葉緑体よりも高いことが明らかとなった.OMTのオキサロ酢酸に対する親和性がDCTに比べて高いことと併せて判断すると,C4光合成におけるオキサロ酢酸の葉肉細胞葉緑体への取り込みにOMTが積極的に関与していることが期待された. 3.イネホモログ遺伝子の単離 両輸送体のイネホモログ遺伝子の探索を行った.ゲノムデータベース中に各輸送体をコードすると思われる遺伝子が1種類ずつ存在しており,現在そのcDNAを単離中である.ノザン解析の結果,DCT遺伝子はイネ植物体全体に渡って同程度発現しており,光合成器官で多量発現しているトウモロコシとは異なる発現調節を受けていることが明らかとなった.
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