研究概要 |
本研究では、分子遺伝学的な手法を取り入れた構造学的機能解析を行うため、Rhodobacter capsulatusのrnfABCDGE遺伝子産物(Rnf複合体)とMesorhizobium lotiのfixABCX遺伝子産物の発現・精製系の,結晶化と遺伝学解析を行っている。本年度は,(1)酸素に不安定なRnf複合体やfixX産物を活性型として迅速精製するために,Ni以外の(His)6-tag吸着素材を検討した。モデル鉄硫黄蛋白質として好熱枯草菌Bacillus thermoproteolyticusフェレドキシンへのC末端(His)6-tag付加体を用いた結果,亜ジチオン酸存在下でもキレート剤から遊離しないZnが有効であることを示すことができた。(2)Rnf複合体の基質の一つであり取り扱いの容易なR. capsulastus NifFの大腸菌内での大量発現・精製系を確立した。(3)M. loti fixX遺伝子について大腸菌内での発現実験を行った結果は封入体形成し、封入体からの再構成が可能であったが,再構成物の収量は微量であった。(4)fixABCXオペロンはほとんどの根粒菌で同様なオペロンとして存在するため、全体を同時に発現させることにより安定化する可能性があると考え、オペロン全体をT7プロモーターの支配下にクローン化し,大腸菌で発現させた。SDS-PAGEにより、FixCの推定分子量に相当するバンドを不溶性画分に確認したが、FixA, B,およびXは可溶性、不溶性画分共に確認できなかった。(5)宿主として大腸菌を用いることに限界があると考え,光合成細菌と根粒菌の両方に使用可能な発現ベクターを開発した。以上,当初の研究目的は未達成だが,引き続く研究の土台を形作ることができた。
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