研究課題
基盤研究(C)
酸性土壌に見られる植物生育阻害の主要因子はアルミニウム(Al)イオンである。我々は、Alイオンが植物細胞や根に吸着し、ミトコンドリアの機能障害と活性酸素の誘発を促進し細胞死に至ることを見い出していた。本研究は、Alの細胞への吸着とともに始まる初期応答反応から細胞死に至る後期応答反応の詳細を解析し、Alの障害機構の解明を目的とした。Alに対する初期応答反応をタバコ培養細胞で解析した結果、Alはショ糖-H^*共輸送体を介したショ糖の取り込みを阻害することを見い出した。Alによるショ糖の吸収阻害は、Alによる細胞伸長阻害や細胞死を説明出来る重要な初発の障害と考えられる。すなわち、ショ糖の吸収阻害は水吸収阻害とリンクしており、その結果、細胞伸長を阻害すると。一方、ショ糖吸収の阻害は、必然的にミトコンドリアへの炭素源の供給を抑制し、その結果ATP欠乏等のミトコンドリアの機能低下による細胞死を誘発すると考えられる。なお、Al処理細胞ではミトコンドリアの機能低下が顕著に見られるが、Al処理細胞及びコントロール細胞から単離したミトコンドリアの機能に大きな差が見られなかった。よって、Al処理によってミトコンドリア自身が障害を受けるのではなく、炭素源の欠乏がミトコンドリア機能低下の主な原因であると思われる。Alによるショ糖吸収阻害は、タバコの根においても観察された。一方、Al添加直後と細胞死が誘発される後期の両方において、一過的な細胞質カルシウム(Ca)イオン濃度の変動を見い出した。CaイオンがAlストレスのセカンドメッセンジャーとして働いている可能性が高い。Al耐性に関わる因子として、Al耐性度の異なるタバコ培養細胞株2株とエンドウ2品種の比較解析から、ペルオキシダーゼ遺伝子がAl耐性遺伝子であることと、ATP含量がAl耐性度の決定要因の一つである可能性を各々見い出した。
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