タバコ培養細胞BY-2から、アクチン繊維束化タンパク質であるビリンの精製を行った。BY-2細胞の粗抽出画分に、ニワトリ胸肉から調製したF-アクチンを加え、遠心後結合した成分を高塩溶液で抽出した。更にカラム操作によって、高濃度の分子量120-kDaと116-kDaの2種のビリンを含む分画を得ることができた。この分画を使って、ユリ花粉ビリンに対する抗血清からBY-2ビリンと反応する特異的な抗体を精製した。この抗体による免疫蛍光染色法によって、BY-2細胞内におけるビリンの局在を解析した結果、アクチン繊維の束にビリンが存在することが明らかになった。またおもしろいことに、ビリンは白色体(原色素体)の膜表面にも存在することがわかった。このことは、細胞分画法によって得られた白色体を含む画分中に、ビリンが存在することからも実証された。現在、白色体におけるビリンの役割について解析を行っている。BY-2細胞の細胞周期を同調させ、各周期特異的に出現する細胞内構造におけるビリンの局在も解析した。しかし、アクチン繊維の束構造が存在しているフラグモプラストにおける、ビリンの存在は確認できなかった。 また、この抗体をプローブとして用いることによって、BY-2細胞のcDNAライブラリーからイムノスクリーニングにより、ビリンをコードしている遺伝子を単離してアミノ酸配列を解析した。数個のクローンの内、ビリン分子の全長をコードしているクローンを得ることができた。GFPなどでラベルしたこのクローンを細胞内で発現させる系を、現在検討中である。
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