ユリ花粉から調製した粗抽出画分中に存在する植物ビリンであるP-135-ABPとP-115-ABPは、Ca^<2+>存在下でDNase Iアフィニティーカラムに吸着しEGTA溶液で溶出された。従って、画分中のG-アクチンと複合体を形成することが示唆された。そして精製したP-135-ABPは、Ca^<2+>存在下でG-アクチンの重合を加速した。これらの結果から、P-135-ABPは重合核形成活性を有することが示された。またP-135-ABPは、Ca^<2+>存在下でアクチン繊維端をキャップすること、そしてアクチン繊維を切断あるいは脱重合することもわかった。既に植物ビリンは、アクチン繊維を束化することが明らかにされている。このように植物ビリンも動物ビリンと同様、Ca^<2+>に応じてアクチンに対して様々な作用をすることが示された。一次構造の類似性から、P-115-ABPも同様な性質を有することが推測される。従って発芽した花粉管内において、植物ビリンはCa^<2+>濃度の低い基部領域ではアクチン繊維束化因子として作用し、Ca2膿度の高い先端部ではアクチン繊維の脱重合や切断といったアクチンのダイナミクスの調節因子としても作用していると考えられる。P-135-ABPのアクチン重合促進活性は、他のアクチン結合タンパク質であるプロフィリンが存在すると発現しない。花粉にはアクチンと同程度のプロフィリンが存在し、G-アクチンと複合体を形成していると考えられている。従って、植物ビリンの重合核形成活性は花粉内では発現していないと思われる。 花粉以外の植物細胞にも、ビリンは広く存在している。おもしろいことに、タバコ培養細胞BY-2ではビリンはアクチン繊維束と共局在するとともに、プラスチドと思われるオルガネラ膜表面にも存在していた。現在このオルガネラを同定しているところである。この結果は、ビリンが単にアクチンの高次構築機構に関与するだけではなく、オルガネラの細胞内のポジショニングの機構にも関与している可能性を示唆している。
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