研究概要 |
本研究では、申請期間内に、シロザより得られる光変換性水溶性クロロフィルタンパク質,CP668の生理学的な機能を分子生物学的手法により解明し、また、その立体構造をX線結晶学的方法により決定する事を目的としている。そのために現在、おおまかに3つの研究プロジェクトを進めている。 1.シロザCP668を発現させたArabidopsis thalianaの表現型の解析 本研究室でクローン化されたCP668 cDNAをCaMV35Sプロモーターに接続しAgrobacterium系を用いてシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)へ導入した。表現型の大まかな特徴としてvegetative growth phaseでは明らかにwild typeよりも成長速度が速かったが、reproductive phaseへの移行が大幅に遅延し、種子の形成も抑制された。全体的な植物の色調はwild typeと比較してより濃緑色となった。現在、色素分析を含めた表現型の詳細を解析中である。 2.CP668の細胞内局在性に関する研究 CP668の細胞内局在性に関与すると考えられるN末端・C末端付加配列の機能を調べるために、この配列をGFP遺伝子に接続し、植物細胞に導入して細胞内局在を解析している。一方、抗体を作製し組織分布および細胞内分布を調べた所、水溶性画分の他に、葉緑体の膜画分に分布するCP668も存在する事が明らかとなった。 3.CP668の組換えタンパク質の安定した発現系の構築 現在、大腸菌中でCP668を発現している発現系では、未だ結晶化を行って立体構造を決定できる程の収量と純度が得られていない。このため現在さらに発現系の改良を行って、より安定的に大量の純粋な組換タンパク質を得られる発現系を構築している、CP668はS-S結合を多く有していると考えられ、現在は大腸菌で発現させてもほとんどが不活性型として発現される。今後さらに条件を改良し、本年度内に結晶化までを行う予定である。
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