研究概要 |
シロザ中に見い出される光変換性(Class I)水溶性クロロフィルタンパク質の構造およびその生理機能は現在も不明である。本研究では、シロザより得られる光変換性水溶性クロロフィルタンパク質,CP668の生理学的な機能を分子生物学的手法により解明し、またその構造を解析する事を目的とした。昨年度作製したCP668遺伝子を過剰発現させたtransgenicシロイヌナズナ株の表現型を解析を試みている。しかしこの過剰発現株は不完全不稔性を示し、種子が極端に得にくい事からその表現型の解析に難航している。稔性および成長速度が極めて低い点以外には目立った形態的な変異は示していない。現在,この株の光合成活性や色素組成を解析中である。また、現在はCP668ゲノム遺伝子のプロモーター領域をGUSレポーターへ接続したコンストラクトを導入したtransgenicシロイヌナズナ株の作製を遂行しており、選抜分化培地においてカルスから発芽がみられている。 抗CP668抗体を用いて他植物の抽出液をウエスタンブロット分析すると、多くの植物種の膜画分においてCP668と分子量は異なるが、類似の抗原性を有するタンパク質が存在している事が明らかとった。この30kDタンパク質をホウレンソウから単離したところ、光合成アンテナタンパク質の一種であるCP29である事が明らかとなった。この事は1次構造上の相同性の低いCP668とCP29の抗原性が類似している事を示しており、両者の立体構造が類似している可能性が示唆された。 このように本研究により、シロザ水溶性クロロフィルタンパク質について、その構造と機能に関する多くの新知見を得る事ができた。
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