研究概要 |
植物成分の多様性に深く関わるP450とトリテルペン環化酵素(OSC)の遺伝子/タンパク質構造と反応様式の関係.発現制御と生成物の生態生理機能,および分子進化を研究した. P4501FS(CYP93C)は特異なアリール基転位反応によりマメ科特有の活性物質イソフラボノイドを合成する.複数(最大3ヶ所)の部位特異的変異を導入したCYP93Cタンパク質は熱安定性が著しく向上し,広く植物に存在するフラボン合成酵素(FNS)活性が発現した.従ってIFSはFNSと共通祖先より,タンパク質の安定性を犠牲にして進化したと示唆された.一方改変CYP93Cの分子シャペロンとの共発現により,大腸菌での大量調製と精製に成功した.今後,物理化学的解析を通じて反応特異性に関する知見を深める.さらに,IFSと次の段階の脱水酵素を酵母で共発現させ,反応の共役により異種細胞でのイソフラボン合成能を格段に向上させた.他方,マメ科モデル植物ミヤコグサの根粒で発現するP450の遺伝子構造をかずさDNA研究所と共同で解析し,多数のパラログ遺伝子が存在し,個々の発現様式に差異があることを見出した.植物微生物相互作用におけるこれらのP450の生態生理機能は非常に興味深く,今後形質転換ミヤコグサを用いて機能を解明する. ミヤコグサOSCの網羅的解析をほぼ終了し,植物OSCの分子進化の方向性に関して知見を得た.特にβ-amyrin合成酵素群の変異が植物トリテルペノイドの著しい多様性の主要な要因と考えられた.特定のアミノ酸残基の挿入や欠失が触媒機能の多様化に重要な役割を持つことが想定され,ホモロジーモデリングでこのような変異による活性部位の構造変化の予測を試みた.今後部位特異的変異導入により,活性の変化を解析する.またOSCの発現改変を施した形質転換ミヤコグサを育成した.現在その生態生理を検討している.
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