研究課題/領域番号 |
14540607
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野口 巧 筑波大学, 物質工学系, 助教授 (60241246)
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研究分担者 |
杉浦 美羽 大阪府立大学, 大学院・農学生命科学科, 助手 (80312255)
池内 昌彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (20159601)
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キーワード | 光合成 / 光化学系II / ラン藻 / 赤外分光法 / 熱発光 |
研究概要 |
光化学系IIのCP43蛋白質のC末端にヒスチジンタグを導入した好熱ラン藻Thermosynechococcus elongatus(H43)を用い、今回はさらに、D2蛋白質の160番目のチロシン残基をフェニルアラニンに置換した変異体(D2-Y160F)を作成した。このチロシン残基はY_Dと呼ばれ、光化学系II白質中において第一電子供与体クロロフィルP_<680>へ直接的電子供与体であるD1-Y161(Y_z)と対称的な位置に存在し、副次的電子供与体として働いている。Y_Dは、通常の生理条件下では安定な中性ラジカルとして存在しているが、D2-Y160F変異体ではY_Dが欠損しており、そのラジカル形成能が失われている。この変異体を用いて、P_<680>の酸化の際の光誘起フーリエ変換赤外(FTIR)差スペクトル、及び、酸素発生系のS_2中間体と第一キノン電子受容体Q_A間の熱発光を測定し、光化学系IIおけるY_Dの主電子移動経路への影響とその役割を調べた。熱発光測定では、野生株(43H)でもD2-Y160Fの場合でも、同じ温度に発光ピークが観測された。しかし、P_<680>^+/P_<680>FTIRスペクトルでは、1751cm^<-1>のピークが約10cm^<-1>低波数シフトしていた。このことから、Y_Dの有無は酸素発生マンガンクラスター及びQ_A、のポテンシヤルにはほとんど影響しないが、P_<680>のカルボメトキシC=O基の水素結合状態、または、P_<680>の近傍蛋白質の構造を僅かに変化させていることが示唆された。この微小な構造変化がP_<680>の酸化還元電位を上げ、P_<680>上の正電荷をYz及び酸素発生マンガンクラスターに移動させやすくしていると考えられる。
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