研究概要 |
サケ科魚類のGnRH受容体の構造を決定するため、受容体遺伝子のクローニングを行った。まず予備実験として、サクラマス、ニジマス、シロザケの、それぞれ複数の個体の下垂体をプールしたものからRT-PCR法により受容体遺伝子の部分断片の増幅を行った。その結果、サクラマスで4種類、ニジマスとシロザケで2種類の部分配列が得られ、サケ科魚類ではGnRH受容体遺伝子の多様性が大きいことが示唆された。そこで対象をサクラマスに絞り、単一の個体から受容体遺伝子のクローニングを行うことにした。下垂体および脳からRT-PCR法により、4種類の遺伝子断片が得られ、さらに5'RACE法によってこれまでに5'種類の遺伝子(msGnRH-R1〜5)の配列を決定した。これらは2つのグループ(R1,2,3とR4,5)に分かれ、グループ間の相同性は60-70%であった。特にGnRHとの結合に重要なN末端細胞外領域の配列が異なっていた。また、それぞれに特異的なプライマーを設計してサクラマスの各臓器での発現を調べた結果、脳では全ての遺伝子が、下垂体ではR4以外の遺伝子が発現していた。それ以外にも生殖腺や腎臓、筋肉などでも特定の遺伝子の発現が見られた。また、予備的ではあるが、脳や下垂体で発現に季節変動があることも示された。これらの結果は、第27回日本比較内分泌学会大会で発表され、論文作成中である。予想以上に多数の遺伝子が存在していたため、下垂体と脳におけるGnRH受容体発現細胞の同定に至らなかったが、存在する全ての遺伝子をきちんと同定することは今後の研究の基盤を作る上で重要である。得られた部分配列は発現解析に必要な分子プローブとして有用であることが示された。今後は、発現細胞の同定・発現変動の解析を行うと同時に、受容体の機能解析には受容体の全一次構造の決定が必須であるので3'側の配列決定を行う。
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