研究概要 |
本年度はサクラマスGnRH受容体遺伝子の全塩基配列の決定とその発現細胞の同定および季節変動について研究した.我々はこれまでに5種類の受容体遺伝子(R1-R5)を同定しているが,そのうちR3について全長のcDNAを単離した.現在,その全塩基配列を決定中である.他の遺伝子については,脳および下垂体のcDNAライブラリーを作成し,そこから単離することを試みる.発現の解析については,受容体遺伝子の発現レベルが低いことが予想されるため,まず,発現レベルの高い季節,もしくは成熟ステージがいつかを調べることにした.R2とR3以外の3種類の受容体mRNAおよびそのバリアントを高感度かつ特異的に測定する系をリアルタイムPCR法により確立した.R2とR3は塩基配列がよく似ているため,両者をいっしょに測定する系を確立した.サクラマスを,未成熟な1歳魚から産卵期の2歳魚にかけて毎月採集し,その脳と下垂体中に含まれる各GnRH受容体mRNA量の変化を調べた.また,リガンドであるGnRHのGnRH受容体遺伝子の発現に対する効果を明らかにするため,毎月GnRHアナログを投与し,1週間後に脳と下垂体を採取して同様の解析を行った.脳と下垂体では発現の変動パターンが異なり,脳では1歳魚の冬に発現レベルが高く,産卵期に向かって減少していった.また,明確なGnRHアナログの効果は見られなかった.一方,下垂体では2歳魚の春に高く,夏にかけて減少した後,メスでは産卵期に再度上昇した.また,メスでは産卵期前にGnRHアナログによる発現レベルの上昇が見られた.脳と下垂体共に,R5はR1より3-5倍レベルが高かった.これらの情報を基に,発現レベルの高いことが予想される試料を用いてin situハイブリダイゼーション法により,発現細胞・領域の同定を試みたい.
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