研究概要 |
我々はこれまでに、消化管間充織で特異的に発現される転写因子Fkh6(最近、遺伝子名がFoxl1に変更されたので以下それに従う)をノックアウトした(Foxl1-/-)マウスでは、腺胃上皮細胞の増殖が昂進し、その分化が異常になることを見いだし(Fukamachi et al.,Biochem, Biophys.Res.Commun.,280,1069-1076,2001)、間充織から分泌される誘導因子の同定を試みてきた。最近このノックアウトマウスの消化管上皮直下に、細胞外基質であるプロテオグリカンが異常蓄積していることが報告され、これが誘導因子である可能性が示された(J.Biol.Chem.,276,43329-43333,2001)。実際、我々が作成したノックアウトマウスでも細胞外基質が増加していることが確認されたので、この異常蓄積された細胞外基質の作用機構の解明が重要な課題となった。 最近我々は、Foxl1-/-マウスの十二指腸でパネート細胞の分布に異常があることを見いだした。一方、細胞接着・情報伝達因子であるEphB2/B3が欠損するとパネート細胞の分布が異常になることが最近報告された(Cell,111,251-263,2002)。よって、Foxl1-/-マウスにおいても、細胞外基質の異常蓄積がEphB2/B3の分布異常を引き起こし、その結果、上皮細胞の増殖・分化が異常になるという機構が考えられる。実際、Foxl1-/-マウスにおいてEphB2/B3の分布に異常があるという予備的なデータが最近得られた。今後、このデータを確認すると共に、上記の仮説に基づいて、解析を進める。
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