| 研究概要 |
水は生命にとって不可欠な物質である。成体カエルは腹側皮膚から水を吸収し,膀胱で水を貯留および再吸収を行うことで,体内の水バランスを維持している。近年,哺乳類ではアクアポリンと呼ばれる水チャネルが生体の水恒常性に重要な役割を果たしていることが明らかにされてきたが,両生類におけるアクアポリン分子の存在やその役割はほとんど解明されていない。本研究では,アマガエル(Hyla japonica)の腹側皮膚からアクアポリンをコードする3種のcDNA(AQP-h1,AQP-h2,AQP-h3)をクローニングした。RT-PCR法でAQP mRNAの発現組織を確認したところ,AQP-h1 mRNAはほとんどの各組織に検出され,AQP-h2 mRNAは腹側皮膚,腎臓および膀胱の抗利尿ホルモン(ADH)調節性水代謝器官を含むいくつかの組織に検出された。一方で,AQP-h3 mRNAは腹側皮膚にのみ検出された。
AQP-h2とAQP-h3に対する抗ペプチド抗体を用いた蛍光抗体法では,AQP-h2タンパク質は腹側皮膚および膀胱に発現し,AQP-h3タンパク質は腹側皮膚のみに発現した。腹側皮膚において,AQP-h2およびAQP-h3は顆粒層の顆粒細胞に発現し,最外顆粒層ではバソラテラル側の細胞膜に,それ以下の顆粒層では細胞膜全体に局在していた。膀胱ではAQP-h2が主に顆粒細胞の細胞質に局在していた。さらに,ADHを腹側皮膚および膀胱に作用させると,腹側皮膚ではAQP-h2およびAQP-h3の両方が最外顆粒層の主細胞アピカル膜で強く染色された。膀胱では,金コロイドを用いた免疫電子顕微鏡法により,AQP-h2がAVTの刺激でアピカル側の細胞膜上に移行することを示した。AQP-h2およびAQP-h3は,両生類におけるADH調節性AQPであることを示唆している。
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