研究概要 |
胚期ニワトリの網膜色素上皮細胞では、時期特異的にメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)が合成される。期を同じくして、眼球内では新規成長ホルモン(GH)isoform(s-cGH)が合成され、色素上皮表面に発現するGH受容体に結合する事を見出した。これらの観察結果は、局所的なGH-MSH系が網膜形成に関与していることを示唆する。本年度はGH-MSH系に関する解析を進めると共に、その他の下垂体ホルモンの発現についても検討した。 1.眼球に発現する下垂体ホルモンの同定 (1)眼球でGH発現が検出されたことから、GH発現を担う転写因子Pit-1発現の有無を調べた。その結果、神経網膜に於いてPit-1が発現すること、及びその発現が発生の進行に伴い上昇することが分かった。さらに、Pit-1がプロラクチンや甲状腺刺激ホルモンの発現をも制御することから、これらのホルモンの発現も調べた。その結果、下垂体前葉と同様に網膜でもこれらのホルモンが作られることが判明した。 (2)眼球で下垂体中葉ホルモンMSHが免疫組織化学的に検出され、MSHの前駆体であるPOMCの発現も確認されている。しかし、POMCからMSHを作る酵素群(PC1およびPC2)の遺伝子発現については不明であった。そこで、鳥類で初めてPC1およびPC2の遺伝子をクローニングし、これらが、POMC mRNAと共発現していることを明らかにした。 (3)眼球に於いてGH遺伝子の逆鎖RNAが発現していることを見出した。 2.メラノコルチン受容体の薬理学的解析 眼球内にはMSH受容体と考えられる3種のメラノコルチン受容体(MC1R, MC4R, MC5R)が発現する。胚期ニワトリの網膜色素上皮細胞で合成されるMSHは、これらの受容体を介して働くものと考えられる。これらの受容体がMSHをリガンドとすることを明らかとした。
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