ソテツでは他の裸子植物と同様に、受粉滴が分泌されることが知られているが、この受粉滴によって効率良く花粉をとらえることができる。この受粉滴の分泌メカニズムの解明を行った。また、受精過程の観察も行い、この段階で分泌される液の由来、成分を調べた。受粉の有無と受精後の胚発生の関係についても調べた。今回の研究から、以下の点が明らかにされた。1)受粉滴は、受粉期間を通して分泌される。2)受粉滴は珠心組織から分泌される。3)受粉滴の成分は、3種類の糖と3種類のアミノ酸を含む。4)受精直前に、雌性配偶体の表面から液体が分泌される。5)この液体の中を雄性配偶体由来の精子が泳ぐ。6)造卵器の頸細胞が開き、内側から別の液が分泌される。7)受粉しない胚珠は生長をしない。8)受粉しても、胚珠に取り込まれた花粉が少ないと、高い頻度で、胚の不稔化が生じる。 今研究によって、受精直前の分泌液の由来が、雌性配偶体と造卵器であることが明らかにされたが、2カ所からの分泌の確認は初めてのことである。雌生配偶体からの分泌は、針葉樹にも存在し(当研究者が提唱)、裸子植物に普遍な現象かもしれない。造卵器からの分泌については、さらに他の裸子植物での研究が必要であり、この研究は被子植物の花粉管誘導研究と関係するであろう。雌性配偶体あるいは造卵器からの分泌液は、シダ類の精子誘導物質に対応すると推定して間違いはないだろうが、この観点での研究が望まれる。
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