研究課題/領域番号 |
14540628
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
遠藤 克彦 山口大学, 理学部, 教授 (70089845)
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研究分担者 |
山中 明 山口大学, 理学部, 助教授 (20274152)
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キーワード | ベニシジミ / 蛹の体色 / 季節型 / カイコガの脳 / 夏型ホルモン / 精製単離 / N-末端のアミノ酸配列 / 一次構造 |
研究概要 |
1、ベニシジミの蛹の体色は、成虫の翅の色と密接な関連のもとに決定される。 ベニシジミには、黒色とベージュ色の体色の蛹が存在する。この蛹の体色が、成虫の季節型と同様に、幼虫期の日長と温度によって決定されることを発見した。また、一度、幼虫期の日長と温度によって前決定された蛹の体色が、前蛹期に低温に曝すと、蛹の体色が成虫の翅の色と同様に短日方向にシフトすることが明らかとなった。前蛹期の低温によって蛹体色がシフトする際には、蛹全体の体色が黒化するのではなく、頭胸部が顕著に黒化することを発見した。さらに、いずれの蛹の体色の変化の際にも、蛹体色の黒化(ベージュ色化)に伴って、成虫の翅の赤色化(黒褐色化)を伴うことを見出した。すなわちこれは、蛹の表面を覆っているクチクラの黒色化と成虫の翅を覆っている鱗粉の黒褐色化が密接な関連のもとに調節されていることを意味している。これは、チョウの蛹の体色が成虫の季節型発現と密接に関連していることを示した初めての発見である。 2、カイコガ成虫の脳内に存在する夏型ホルモンの一次構造の決定 カイコガの脳内に存在する夏型ホルモン活性ペプチドを10000個のカイコガ成虫の脳-食道下神経節複合体から抽出後、Sepharose-12カラムを用いたゲルろ過およびC8、C4、C18カラムを用いた6回の逆相高速液クロマトグラフィーを経て、紫外線(220nm)吸収では単一ピークを示す、夏型ホルモン活性ペプチドの高度精製標品を得ることに成功した。この高度精製標品を用いて、N-末端のアミノ酸配列を解析したところ、1回目の精製標品では15個の、2回目の精製標品では25個のアミノ酸配列を特定することができた。しかし、1回目と2回目に得られたN-末端のアミノ酸配列の一部に違いがあり、活性ペプチドの一次構造を解析することはできなかった。けれども、本研究で得られた成果は、近い将来に活性ペプチドの一次構造が決定できる明るい見通しを示唆するものであった。
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