研究概要 |
環形動物のヘモグロビン(Hb)は細胞外に存在し、およそ200本のポリペプチド鎖からなる分子質量3.5MDaに及ぶ巨大なタンパク質である。これらのHbは酸素を結合するグロビン鎖とヘムを持たないリンカー鎖の2種類から構成され、4種類のグロビン鎖の12量体がリンカーによってつなぎ合わせられることにより巨大化すると考えられている。 今年度は、アオゴカイHbの4種類のグロビン鎖のうち、3本のアミノ酸配列を決定した。それを基礎にこれまでに報告されている類似の巨大Hbのグロビン鎖30本あまりを含めて分子進化の系統樹を作成した。環形動物の他にチューブワーム、有髭類のHbあるいはクロロクルオリンも含めての解析であったが、2つのファミリーに分岐することが確認された。その時期は脊椎動物のHbとミオグロビンとの分岐とほぼ同じ10億年前と推定された。2つのファミリーの存在にCys残基の数とサイトを加えて、4種類のグロビン鎖に対して、種を越えたゲロビン鎖の命名法を新たに提案した。また、構造解析の観点から、TOP-MSによる質量分析を行い、グロビンの最小ユニットである"a/A-b-B"の存在を捉えた。これらの結果は動物単会中国四国支部会(2002.5.18,高松)、比較生理生化学会(2002.8.つくば)、生化学会(シンポジューム、2002.10.17,京都)、徳島生物学会(2002.12.7、徳島)などで発表した。
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