動物の体表を覆う皮膚は、外部からの多様なシグナルに曝されており、そのため皮膚には、種々の感覚受容センサーが必要である。無脊椎動物や変温脊椎動物では、高度に機能分化した感覚器官以外に、皮膚に味やにおい、水圧、音(空気振動)、光などの受容センサーの存在が知られている。 皮膚にある色素細胞も、こうした非視覚系光センサーの一つと考えられているが、その光受容機構は十分解明されていない。我々はこれまで、光応答性が確認されているゼノパス幼生尾ヒレ黒色素胞、および光(可視光)応答性が確認されていないほ乳類の色素細胞(ヒトメラノサイト(NHEM)、マウスメラノサイト(melan a2))を材料に、その光受容機構の存在を検討してきた。これらの皮膚色素細胞ではすべて、光受容分子(オプシン)と情報伝達に関わるGtの発現が確認され、色素細胞が非視覚光応答系として機能している可能性が示されている。 一方、色素細胞以外の皮膚細胞も光受容系として機能している。皮膚光覚とよばれ、ミミズなどで知られている。タマネギバエ(Delia antiqua)が、蛹になる時期に休眠するかどうかは、幼虫のおかれた温度と日長条件によって決定されている。目のない幼虫が光シグナルをどのように感受しているのかについてはまだ明らかになっていない。今回、可視光、近紫外、赤外の発光ダイオードを光源として用い、各波長光に対する幼虫の行動を観察した。幼虫は青緑色(505nm)の光に最もよく反応し、負の走光性を示した。550nm以上の光には反応しない。幼虫体部から抽出したRNAを用いたRT-PCRで、ショウジョウバエRh1オプシン類似の産物が得られ、現在その存在部位を免疫組織抗体を用い検討中である。
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