1.明暗サイクルおよび制限給餌の位相変位に対する反応(野生型と無周期型を用いた比較) 野生型では明暗サイクルの位相変位により活動リズムは移行期を経て再同調するが、無周期型では直ちに再同調した。恒暗下で制限給餌を行うと野生型、無周期型共にこれに同調する給餌性リズムが現れるが、野生型でのみ(SCN依存性の)自由継続リズムの周期成分も観察された。一方、制限給餌の位相を変位させると、野生型、無周期型共に1〜2日後には新しい位相の給餌性リズムが現れるが、元の位相の給餌性リズムも数日間持続した。このことから、給餌性リズムとSCN依存性リズムは、その発現や同調因子に対する同調のメカニズムが少なくとも部分的に異なる分子的基盤を持つ可能性が示唆された。 2.さまざまな周期の給餌刺激と明暗サイクルに対する同調の有無(野生型と短周期型を用いた比較) 野生型、短周期型共に恒暗下では制限給餌の周期に殆ど影響されずにそれぞれのSCN依存性の自由継続リズムの周期成分が維持された。26〜34時間周期の制限給餌では、野生型では全ての個体(N=6)が全ての周期で給餌性リズムを示した。短周期型(N=8)では34時間の周期でのみ約半数の個体で給餌性リズムが観察されないか不明瞭であった。従って短周期型は同調できる上限の周期は野生型よりやや短い傾向があることが示唆された。次に自由摂食下で26〜31時間周期の明暗サイクルを与えると、野生型も短周期型もこれら全ての周期に同調できた。しかし31時間を越える周期の明暗サイクルは試みなかったので、短周期型が同調できる上限の周期が野生型に比べ短いかどうかは不明である。短周期型では明暗サイクルの周期が長くなるほど活動開始の位相が前進し、活動期が明期に移行する傾向があった。このことから短周期型の明暗サイクルに対する活動リズムの同調のメカニズムは野生型のそれとやや異なる可能性が考えられる。
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