研究課題
基盤研究(C)
平成14年度からの3カ年間で、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の全塩基配列を30種以上の爬虫類から決定し、それらmtDNAゲノムの遺伝子配置や制御領域の構造の特徴づけを行つた。その結果多くの爬虫類のmtDNAは一定の37コの遺伝子をよく保存された順序でコードしているが、ヘビ類、アガマ類、カメレオン類、オオトカゲ類、ヨロイトカゲ類などにおいては、典型的な脊椎動物の遺伝子配置と異なる配置を持つ例もあることが示された、次に、mtDNAにコードされる37コの遺伝子ごとに既知の相同遺伝子の塩基配列とアラインメントを行い、最尤法、ベイズ法などを用いて分子系統樹の作成を行った。さらに、系統ごとの分子進化速度の可変性を前提とするソーンらの方法を用いて、爬虫類の系統間の分岐年代を推定した。その結果以下のことが示唆された。1)トカゲ亜目は、ヤモリ下目、イグアナ下目、スキンク下目、アンギストカゲ下目に大別できる、2)これらの4下目の中では、ヤモリ下目が最も初期に分岐した、3)現在の分類では独立した亜目に立置づけられているミミズトカゲ類は、トカゲ類の内部(恐らくカナヘビ類に非常に近縁な系統)から派生した、4)ヘビ類はオオトカゲ類の近縁系統から進化したのではなく、現生のトカゲ類の基部系統ないしはトカゲ類全体との姉妹系統から派生した可能性が高い、5)真性ヘビ類の主要な科は新世代第三紀に分岐したと思われるが、トカゲ類の主要な科は三畳紀からジュラ紀にかけての非常に古い時代に分岐したらしい。哺乳類や鳥類では、目レベルの系統分岐が白亜紀の大規模な大陸の分断によって促進されたことが、これまでの研究で示唆されている。トカゲ類の場合、このような白亜紀の大陸分断は科内の亜科あるいは属レベルの分岐に関わった可能性がある。以上のようなアプローチで爬虫類の科間の系統関係と分岐年代の問題を整理し、順次論文化を進めている。
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