研究概要 |
当初の研究計画に従って,今年度はヒイラギ属魚類のうち特にLeiognathus aureus種群について重点的に研究を進めた.タイプ標本などの観察については,ドイツのゼンケンベルク博物館およびフンボルト大学動物学博物館,オランダのライデン自然史博物館,英国の国立自然史博物館,フランスの国立自然史博物館,および横須賀市立博物館を訪問して行った.得られた結果を要約すると次のようになる. 1.Leiognathus aureus種群はL. aureus, L. hataii,およびフィリピンから得られた1未記載種から構成される. 2.本種群は眼の前方から下顎関節部に至る黒線をもつこと,口は前方に突出すること,両顎歯は小型の円錐歯で1列に並ぶことなどによって特徴づけられる.タイワンヒイラギも本種群と類縁であると考えられるが,体が円盤状であること,背鰭先端部に暗橙色の斑紋をもつことなどから,ここでは暫定的に本種群から除外した. 3.本種群に含まれる3種は,鱗数や体背側面の暗色班の位置などから明瞭に区別できる. 4.Leiognathus aureusとL. hataiiのタイプ標本は全て紛失し,実存しないと考えられていた.また,L. hataiiについてはノンタイプ標本も全く存在しないとされていた.しかし,今回の調査でL. aureusのパラタイプ1個体が発見され,L. hataiiについては,タイプ標本と同時期に同じ産地で採集されたノンタイプ標本が発見された. 5.Leiognathus aureus, L. hataiiの再記載および1新種の記載については,すでにIchthyological Researchに投稿し,担当編集委員から掲載可能との連絡を受けている.
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