1.ニハイチュウの分類 日本近海産12種の頭足類(アオリイカ、ヒメコウイカ、シリヤケイカ、スナダコ、ヨツメダコ、ヒメイカ、ミミイカ、ハリイカ、シシイカ、スルメイカ、ヒョウモンコウイカ、ボウズイカ)の腎臓を調べ、寄生するニハイチュウを検索した。その結果、3属19新種のニハイチュウを発見した。 2.滴虫型幼生における細胞数と細胞の種類によるニハイチュウの分類 有性生殖により形成される滴虫型幼生は、成体よりも細胞数がより多く、体制がより複雑である。世界各地のニハイチュウ6属60種について、滴虫型幼生を形成する細胞の種類と細胞数を調べ比較検討した。幼生の細胞数は種により一定であり、ほとんどの種の幼生が37あるいは39細胞で形成されていた。幼生の腹部と頭部を形成する細胞の種類に種差が多くみられた。幼生の細胞数と細胞の種類の違いは、属の違いと無関係であった(2003年度日本動物分類学会で発表)。 3.ニハイチュウの滴虫型幼生における基本的発生様式 ニハイチュウの滴虫型幼生の細胞数は種により一定で、代表的な数は35、37、および39個である。これら細胞数の異なる3タイプの滴虫型幼生について、細胞系譜を決定し比較検討した。3タイプで違いを示す細胞は、幼生の前腹部を形成する細胞群で、発生の後期に形成された。3タイプ間の細胞数の違いは細胞系譜の末端の分裂回数の違いによるものであった。なおその相違以外は3タイプの幼生に共通で、共通に見られる細胞群は発生初期から中期にかけて形成された(2003年度日本動物学会で発表)。
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